合同会社リホインターナショナル
代表
謝村梨帆
写真/十万正人 文/松本 理惠子 | 2021.07.12
合同会社リホインターナショナル 代表 謝村梨帆(しゃむら りほ)
中国内モンゴル出身。8歳のときに来日。「地球の歩き方」出版社勤務を経て、2018年に独立。インバウンドプロモーション・動画制作・キャスティングをメインに2019年6月に法人成り。2020年より中国、イスラエルの企業、会社と2社と業務提携し、三国間での技術やサービスの導入を行う。日本語・中国語・英語が話せるトリリンガル。
謝村氏は8歳までを中国の内モンゴルで暮らし、両親の仕事の都合で日本へ。大学卒業後は海外旅行ガイドブック「地球の歩き方」の出版社に就職し、主にインバウンドプロモーション業務を行った。
「外国人客を誘致したい自治体に向けて、それぞれの国や地域に合わせたプロモーションの提案や企画制作の仕事を4年ほどしました。その後、もっと多くのことにチャレンジしたいと考え、自分の可能性を広げるために独立、起業しました」
謝村氏は独立後も引き続き出版社の仕事をフリーランスで請け負い、それと並行して海外との人脈を活かしたキャスティングや動画制作の仕事を始めたが、大きな仕事や新しい仕事をするには社会的信用が重要だと気付き、1年後の2019年に法人成りを果たす。
「事業は順調でしたが、コロナ禍でインバウンド需要が底を打ち、仕事のオファーも減ってしまいました。そんなとき、研究職だった母が昔バルセロナの研究所にいた際に縁があった、今のビジネスパートナーを紹介されました。その方は中国とイスラエルに最先端テクノロジーの企業をもち、両国間の貿易的な事業をしています。ちょうど日本進出をするタイミングだったとのことで、私に日本の窓口になってくれないかとお誘いをいただいたのです」
2020年に中国・イスラエルの2社と業務提携を締結。現在は、中国進出をしたい日本のハイテク技術をもつ中小企業の現地での開業支援事業や、イスラエルのユダヤ人が開発した子どものためのお金の教育プログラムを日本に導入する事業を展開している。
「日本と海外は文化やビジネスに対する考え方が違うので、日本の感覚でいるとたいてい失敗します。例えば物事の決定スピードです。日本はイノベーティブな提案に対して過去の実績を重視し、大量の資料を時間をかけて検討して結論を延ばしますが、イスラエルの商談は大体3回でやるかやらないか答えを出します。日本が検討している間に向こうは新たに提携先を見つけライバル社に先を越されたり大きなチャンスを逃してしまうことも多いのです」
グローバル化で今後ますます世界水準のビジネス感覚は重要性を増す。謝村氏のような優れた国際感覚をもつブレインがいれば安心だ。
リホインターナショナルは謝村氏のひとり企業のため、企画・営業・人脈の構築などすべてを一人でこなす。
「SNSを見て『この人と仕事がしたい』と思えば、自分からアプローチして営業をかけます。アポなしの飛び込み営業もへっちゃらです。我ながらポジティブでアクティブだなと思います」
そう言って笑う謝村氏だが、決して行き当たりばったりではない。明確なビジョンと分析があっての行動だ。
「今は他社のコンテンツを海外向けにプロデュースするBtoBの仕事を中心にしていますが、今後は自社コンテンツでBtoCの分野にも進出したいと考えています。私個人のノウハウに頼る属人的なビジネスではなく、競争力のある自社コンテンツを仕組み化できれば、他社に依存することなく事業の柱を増やしていけます。今回コロナ禍を経験して、ECでモノやサービスを動かすビジネスが強いと再確認したので、今後はその方向で新規事業を組み立てます」
具体的には、日本人が知らない海外のスーパーフードを日本の食文化や味覚に合うよう進化させ、市場に投入するというビジネスを構築中だ。また、自身の化粧品ブランドの立ち上げにも意欲的である。
「スーパーフードについては内モンゴルで健康長寿な食品として親しまれている、ある穀物を日本向けに試作している段階です。栄養価が高く、ダイエット効果や糖尿病、心筋梗塞予防の補助的な効果があるといわれています」
製品や販売戦略が固まれば、その先のプロモーションはこれまでのノウハウが応用できるため、展開は早そうだ。
これらの事業で足固めし資金力をつけた後に、さらなる目標があると謝村氏は語る。
世界を旅して国際力を磨いてきた謝村氏は、「日本のパスポートは世界最強で、ビザなしで193もの国と地域に行けます。この恵まれた権利を活かさないのはもったいない」と語る。
「私は日本のパスポートに変えてから海外20カ国を旅しましたが、その中で注目しているのがバルト3国です。これらの国は近年ITやハイテク産業が急成長しており、今後まだまだ伸び続けます。治安も良く、物価も安く、政府が積極的にスタートアップ支援をしていることからビジネスチャンスを確信し、『10年以内にエストニアに会社をつくって、日本との2拠点生活をしていたい』と夢を新たにしています」
謝村氏の起業家人生はまだ始まったばかり。今はまだ事業の柱をつくっている段階だが、その国際感覚と3カ国語をネイティブに操る言語力、心身のタフさがあれば、どんな未来も強くしなやかに生き抜いていけるに違いない。
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