人材力

新しい美容師の働き方を実現する NEXT世代の人材育成

LINKTH

代表

深作悠太

撮影/片桐 圭(リンガフランカ)文/松本 理惠子 動画/ロックハーツ | 2021.06.10

コロナ禍での1か月間の休業を経て、スタッフ全員が大きく成長したというLINKTHの代表、深作悠太氏。「これからの時代は美容師も肩書を三つはもつべき」と語る深作氏に、人材育成の秘訣と今後のビジョンを聞いた。

LINKTH 代表 深作悠太(ふかさくゆうた)

1987年生まれ。高校を卒業後、国際理容美容専門学校に入学し、卒業後は埼玉のヘアサロンに就職。2013年、チェーン展開するヘアサロン運営会社のナンバー2を経験した。そして2019年8月に大宮駅前の好立地に「LINKTH」をオープンさせ、2020年9月には、大宮2号店となる「Hanon by LINKTH」をオープン。

休業期間中の集客努力でスタッフも成長

埼玉県大宮市でヘアサロンを2店舗展開するLINKTHは、2019年夏の開業から約半年でコロナ禍に直面した。2020年4月には初めての緊急事態宣言が発出。手探りでの対応が求められるなか、深作氏はいち早く「完全休業」を決断した。

「丸々1か月もの休業に迷いがなかったと言えば嘘になります。理美容室は営業自粛の対象外で、同業者は営業を続けていましたから。しかし、経営者として10名いる従業員の命を最優先に考えました。彼らは店を再開したときにお客様が戻って来るか不安そうでしたが、ネガティブに考えても仕方がありません。ここはポジティブに考えようと励まし合いました」

実は、深作氏はコロナが日本で流行し始めてすぐ“嫌な予感”を察知していたという。そのため、休業する場合を想定して早めに税理士に相談していたことで、先手を打って金融機関に融資の申請ができた。

「おかげで従業員に給与の全額保証ができました。スムーズな資金調達がなければ、うちのような小さな会社は“1か月店を閉める”という選択は危なくてできなかったと思います」

休業にあたっては、「今よりパワーアップして再会しよう!」と伝えて、あとは本人たちの自由意思に任せたと言う。時々、安否確認や情報交換の目的でスタッフたちとオンライン飲み会を開くことはあったが、Web会議や日誌報告のような業務を求めることはしなかった。

「スタッフたちは、普段忙しくてなかなかできなかった振り返りや今後のキャリアアップなどについて考える時間ができたようです。そしてそれぞれが自発的に活動を始めました。ブログで前髪のセルフカットの動画を配信するスタッフもいれば、SNSでの集客を工夫したり、スキルアップの勉強をしたり。みんな目的意識をもって楽しそうにやっていたのが頼もしかったですね」

いざ休業が明けてみると常連客は離れることなく来店し、新規顧客も増えた。休業期間中の集客努力が確実に届いていたのだ。

「会社の資金面での痛手はありましたが、スタッフの成長や集客などトータルでは前進できました。休業は結果として正解だったと確信しています」と、深作氏は晴れやかな笑顔を見せた。

経営者は従業員に夢が実現していくビジョンを見せるべき

そんな深作氏に人材育成のコツを聞いた。

「“信じて任せる”“自主性を尊重する”というのが僕の基本スタイルです。それぞれ課題が違うし個性や目標も違うので、画一的なカリキュラムでは限界があるからです」

深作氏は自身でサロンを開く前、チェーン展開するヘアサロン運営会社のナンバー2だったことがある。5年で13店舗のスピード拡大により従業員が増えていくなかで、一から十まで自分で教えることは不可能だと悟った。そこで“信じて任せる”スタイルが確立された。

「個々のスタッフに裁量権をもたせて、やりたいことはどんどんやらせるようにしています。うまくいかなかったり不安な場合に相談に乗るのが僕の仕事。いざというとき頼れる存在であればいい。だから、僕はあえてサロンにいないようにしています。僕がいると簡単に頼ってしまい、指示待ちになって伸びません。また、従業員が自主的に動けるかどうかは、目標や夢をもっているかどうかが大きいと思います。目指す地点があれば到達できるよう頑張れます。そのためには、経営者は従業員に夢が実現していくビジョンを見せるべきでしょう」

これからの時代は肩書を三つはもつべき

深作氏は自身の言葉を体現するべく、サロン経営以外にも二つの事業を手がけている。ひとつは、ボディービルダーとして活動する自身の母親との共同経営で、彼女のパーソナルトレーニングジムの運営をサポートしていることだ。そしてもうひとつは、高齢者向けの訪問理美容サービスだ。老人ホームやデイサービスなどを訪問して利用者の頭を洗ったり散髪したりしている。

「祖母が入院した際、笑顔をなくしたのを見て、美容師の僕にできることを考えたのがこのサービスを始めたきっかけです。髪をきれいにすることで心まで元気になります。お年寄りたちに『ありがとう』『来てくれるのを待っていたよ』と言ってもらうと心が洗われますね」

コロナで一時はサービスの縮小を余儀なくされたが、最近は徐々に訪問再開を希望する施設が増えてきた。今後もこの事業に賛同してくれるパートナー美容師を増やしながら、細く長く続けていきたいという。また今後の計画について、深作氏は次のように語る。

「これからの時代は美容師も肩書を三つはもっておきたいですね。ネイルアートやアイデザイナーなどの美容分野でもいいし、洋服のデザインなど別ジャンルでも構いません。これまではプラスアルファの勉強をしたい場合は、休日を使って外部の学校やセミナーを受講しなければなりませんでした。また、新たな事業をやりたいときは自分で独立起業するのが常でした。そこで、勉強も新事業の立ち上げも社内でできれば最善だと考え、今、環境整備を進めているところです」

ただし、第二第三の武器は礎となる美容師としての技術があってこそ。そのためLINKTHではスタッフのさらなるスキルアップを目指して、外部講師を招いてのプライベートセミナーを月2~3回実施している。

「自社のサロン内でスキルアップの練習をしても内省的になり、新しいものが生まれにくいのです。外部の風を入れることで刺激になり、視野が広がって良い循環が生まれます。また、ごく少人数でのセミナーのため、間近で講師の技を見て学ぶことができ、その場で質問できる点が効果的です」

美容師としての新しい働き方や夢を叶えることができる会社にする、それが深作氏が見据えるLINKTHの未来だ。

「スタッフにはやりたいことを積極的に発信してほしい。その夢が本気なら、会社をあげて応援します!」

「未知の事態に対峙したときこそ、経営者としての決断力が問われます。いかなるときも正しく迅速に決断できる経営者でありたいですね」と深作代表は矜持を語る。

SUPER CEO Back Number img/backnumber/Vol_56_1649338847.jpg

vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
コンテンツ広告のご案内
BtoBビジネスサポート
経営サポート
SUPER SELECTION Passion Leaders
ブランジスタが手がける電子雑誌