株式会社クリテック工業
代表取締役
若林勇二
写真/海老澤 芳辰(リンガフランカ) 文/竹田 明(ユータック) | 2022.11.10
裁判官になるのが小さい頃からの夢で、父親が経営するクリテック工業に入るつもりはありませんでした。司法試験を断念して、人材会社で働いていたのですが、その会社を辞めて起業しようとしましたがうまくいかず、次の仕事を探していたときに、「父親の会社を継がないのか?」と複数人の友人に諭されました。それがきっかけで、業界の市場規模や競合など、いろいろ調査した結果、ビジネスチャンスを感じ、父親の会社を継ぐことを決めました。
当社は通常の橋梁用伸縮装置のメーカーと異なり、施工まで行っています。施工で培ったノウハウを商品開発に生かしている点と、販売会社による間接販売だけでなく、直接自分たちで販売を行っている点が強みです。また、自社工場を持たないファブレスタイプのメーカーであるため、資金や人材を研究開発に集中させることができ、市場の変化に対応できます。
求めているのは、会社の方向性に合わせるよう努めてくれる人材。全員が同じ方向に向かって進んでいるのが理想の組織像。けれども、会社と社員は最初からマッチするわけではありません。長い時間をかけてお互いに理解して相性を深めていきます。そのための前提となるのが、会社の方向性に合わせようと努めるマインド。そんな人が集まれば、自然と組織としてまとまりが生まれます。
23歳から85歳まで、さまざまな世代が働いている会社。年の差が60歳以上。それだけでも、いろんなコミュニケーションが発生して楽しいです。85歳の人の戦時中の体験談は、大変興味深い内容です。入社した人にはみんな聞いてほしいですね。空襲を掻い潜って生き残ってきた世代の人たちには勝てません。逆に70代の社員が20代の社員に、スマホのレクチャーを受けているのも、当社らしい光景です。
「移動したくなるインフラを作る」。移動には2つの意味があります。一つは必要に迫られた場合。たいていの人は、用事があって移動します。そのためには、安心・安全・ストレスフリーなインフラが必要です。一方で、人は体験のためにも移動します。旅行がその代表例です。旅行のためのインフラは、安心・安全だけでなく、楽しめることも重要な要素。いろんな人が移動したくなるインフラをつくるのが、当社の最終目標です。
株式会社クリテック工業 代表取締役 若林勇二(わかばやし ゆうじ)
大学卒業後、裁判官を志して司法試験にチャレンジするも断念し、人材派遣会社や出版会社で主に営業を担当。新会社の設立にも携わり、新規開拓営業も経験した。その後、代理店統括業務などを経て、父親が代表取締役を務めるクリテック工業に入社。2007年から社長に就任し、現在に至る。
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