スーパーCEO列伝

地域密着型こそ成長の原動力

リストグループ

代表

北見尚之

写真/宮下 潤 文/竹田 明(ユータック) マンガ/M41 Co.,Ltd | 2016.12.12

前時代的な不動産業界の体質に疑念を抱きサービスとマナーの徹底で新時代の不動産会社を築き上げた北見尚之氏。不動産のスペシャリストを目指して「リスト」と名付けた会社を地元に密着した経営スタイルで成長させ総合不動産会社として地歩を築いた。

そして、持ち前のチャレンジ精神で海外進出も果たした現在北見氏はどこを目指しているのか?地元の神奈川を出発点に、世界へと視野を広げて更なる成長を模索する北見氏にリストが実践する不動産会社のあるべき姿とグループを支える独自の経営哲学を聞いた。

リストグループ 代表 北見尚之(きたみ ひさし)

リストグループ代表。1965年、神奈川県生まれ。不動産会社のあり方に疑問を感じ、独立を見据えて大手不動産会社に転職。1991年25歳の時に、リスト株式会社を設立し不動産仲介事業を開始。ビルマネジメント、一戸建て住宅の分譲販売と事業範囲を広げ、2000年からは新築マンションの分譲を手掛ける。2010年の上大岡駅前の再開発でデベロッパーとしても業績を挙げ、同年、世界的に有名なオークションハウス「サザビーズ」が有するネットワークを利用したクロスボーダー仲介事業に進出。2013年には「リスト サザビーズ インターナショナル リアルティ」を設立。2016年にはホールディングス経営に移行し、不動産に関する開発・建設・販売・仲介・資産/施設管理・証券化など、総合不動産会社として時代の先と世界を見据えた事業展開を目指す。

北見尚之が実践する持続的成長へ向けた“鉄壁”の経営哲学

「不動産会社は地域に根付いて事業を展開しなければいけない」と唱える北見氏。景気の波に左右されやすい不動産業界で、リーマンショックをはじめとした 経済のうねりを乗り切ってきた、北見流の経営哲学をキーワードで紐解きます。

リストファンをつくる

会社を経営するなかで、大切にしているのは「ファン」を作ること。お客様に当社のファンになっていただくのもそうですが、同時に社員たちに「リストファン」になってほしいと、常日頃思っています。

お客様にリストファンとなってもらうため、“良質の物件を適正価格”で提供するのをモットーにしています。「リストが作った家はいいよね」と言われるような物件を作りたいし、10年たって魅力を失うようなマンションを販売したくはありません。お客様が感動してくれる物件を供給し続けるのが当社の務め。それが会社の持続的な成長を可能にすると信じています。

社員に会社のファンとなってほしいのは、創業時から変わらぬ思い。私は個人的に儲けたくて事業を始めたわけではなく、設立時から「企業としての成長」を念頭に頑張ってきました。当社で働くみんなが自らの会社のファンとなって、会社の成長に向かって協力できる「希望が持てる企業」にしたい。そうして社員みんなが豊かになってくれるのが、私の一番の願いです。私が経営から退いたのちにでも、社員たちがリストグループを世界に名立たる企業にしてくれれば、うれしいですね。


それぞれの地域密着

「不動産屋はその土地に根差さないとダメ」というのが私の信念です。マンションを分譲する際も、周辺のゴミ拾いをするなどして、必ず周辺住民の方と接する機会を作るように心掛けています。

デベロッパーとして当社のターニングポイントになった「上大岡駅前の再開発」も、地域に密着していたから成功したと言えるかもしれません。上大岡は私の地元。住民の理解を得るために、一軒一軒自分の足で回り、熱意を伝えるために一人ひとりと真剣に話し合いました。20年以上、再開発が成功せずにいた土地を、8年という驚異的なスピードで成し遂げられたのも、地域を大切にする私たちの熱意が伝わったからだと思っています。

街全体が魅力的になることで、自分たちが扱う物件の価値も上がります。住みたい街にすれば、住民が増えて活性化します、そしてそれが、地域のためになり、ひいては当社の売上増加につながります。

地域密着の考え方は、世界中どこに行っても変わりません。東京展開にあたっても、社員一同、地域に根差すために努力する姿勢で頑張っています。それは海外でも同じ。ハワイや東南アジアでも地元に密着し貢献するよう努力を重ねています。


チャレンジ or ダイ

チャレンジが当社の危機を救ってきました。2009年にリーマン・ショックの影響で、売上も利益も大きく落ち込みました。しかし、2010年に業績はV字回復。それは、上大岡駅前の再開発が終わり、マンションを販売できたからです。再開発用の土地を取得した当時、会社は50億円程度の売上にもかかわらず、43億円を投入。これは大きなチャレンジでした。結果論かもしれませんが、上大岡駅前の再開発にチャレンジし、短期間で竣工にこぎつけたからこそ、2010年の業績回復が可能となりました。

リーマン・ショックの際の経験を今後に生かすため、「チェンジorダイ」というユニクロの柳井社長の言葉を借りて作った「チャレンジorダイ」を掲げていこうと考えています。人口減少や経済規模の縮小と、日本の中小不動産会社にとって今後は厳しい状態が訪れると予測しています。

そんな厳しい状況を乗り越えて会社をさらなる成長軌道に乗せるには、やはり「チャレンジ」しかありません。ハワイや東南アジアへの進出も、リストグループとして今後を左右する大きなチャレンジ。世界的に有名なオークションブランド「サザビーズ」の不動産ネットワークを利用して、富裕層向けの事業に進出したのも、今後を見据えてのチャレンジです。

礼儀と礼節

当社は、礼儀・礼節には厳しいです。不動産業は、人の財産を預かる仕事とも言えますし、戸建ての住宅やマンションといった、人の一生を左右する大事なものを販売します。だから、不動産業を営んでいくには、何よりも信頼が命。いい加減な態度では、信頼を勝ち得ることなど無理です。だから私自身も、そして社員たちも礼儀・礼節には気を使っています。

そもそも私が不動産業を始めたきっかけは、当時の不動産屋のサービスやマナーに疑念を抱いたから。起業前、仕事で不動産屋とよく取引していたのですが、今でこそ不動産業界で働く人々のサービスやマナーは向上していますが、昔は横柄な態度をとったり、時間にルーズだったりする不動産屋が少なくありませんでした。そこにビジネスチャンスを見出し、昔の慣習が残っている不動産業界で、サービスとマナーを徹底し、新しい時代の不動産屋を作ろうと思い立ちました。だからこそ、礼儀・礼節に気を配った、社員の態度や言葉遣い、立ち振る舞いは、当社のアイデンティティと言えます。


チームワーク

不動産業界は、どちらかというと個人の力量がものをいう世界、と考えられているのではないでしょうか。しかし、当社ではチームワークを重視しています。どれだけ優れた個人がいても、チームとして機能しないと会社が発展していかないと考えるからです。企業を大きくして、そこで働く一人ひとりが豊かになってほしい、そんな思いを胸に起業したからこそ、チームワークを特に大切にしています。

私はスポーツが好きなのですが、友人とチームを組んでトライアスロンにもチャレンジしています。トライアスロンは、本来一人で「水泳」「自転車」「ランニング」をこなす競技ですが、それをリレー形式で行うこともあります。チームで出場すると、チームメイトの頑張りに刺激されて、自分も頑張れます。自分の頑張りがなければ、チームメイトの努力をふいにしてしまうという気持ちを味わってほしくて、社員たちにもトライアスロンにチームで参加することを推奨しています。


有言実行

私は言葉にしたことは、必ず実行してきました。起業する前に大手の不動産仲介会社に転職して営業職の経験を積んだのですが、この時、100本の契約を勝ち取れたら会社を辞めて独立しようと決め、2年でそれを達成して起業しました。

口にしたことは必ず実行する、というのは多分に性格的な気質だとは思いますが、不動産を扱う人間は信用が何よりも大切です。お客様や周囲の人々から信頼を勝ち取るには、言ったことを実行するのが一番です。

これを反対の側面から見ると、「できないことは言わない」ともとらえられます。これまで事業を進めていくなかで、大きなチャレンジに踏み切るときでも、しっかりと準備をして勝算が見えてから踏み出してきました。

目標を言葉にするのは、社員と目標を共有する面から見ても重要です。無理な目標をやみくもに掲げるのではなく、実現可能な目標を社員に伝え、それを実現していく。そうして社員の信頼を勝ち取っていくことも、経営者には大切だと思っています。

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vol.56

DXに本気 カギは共創と人材育成

日本アイ・ビー・エムデジタルサービス株式会社

代表取締役社長

井上裕美

DXは日本の喫緊の課題だ。政府はデジタル庁を発足させデジタル化を推進、民間企業もIT投資の名のもとに業務のシステム化やウェブサービスへの移行に努めてきたが、依然として世界に遅れを取っている。IJDS初代社長・井上裕美氏に、日本が本質的なDXに取り組み、加速させるために何が必要か聞く。
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